日本を含め人権への関心が世界各地で高まりを見せており、企業が人権課題に取り組んでいくことが、国内外のステークホルダーから期待されています。BIPROGYグループは、「世界人権宣言」および「ILO中核的労働基準」等の国際規範を支持し、人権の尊重を、サステナビリティ経営とSDGsの達成における重要な要素と認識しています。2020年6月には、人権に関する国際規範と国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに、「BIPROGYグループ人権方針」を公表しました。また、2021年4月には、「BIPROGYグループ購買取引行動指針」に基づき「BIPROGYグループサステナビリティ調達ガイドライン」を公表しました。「BIPROGYグループサステナビリティ調達ガイドライン」は、人権を含めた社会・環境・ガバナンスについて当社グループとしてお取引先様に理解と協力頂きたい内容を整理しています。これらの方針や指針に基づき、人権デューデリジェンスや人権教育・啓発活動等の取り組みを進め、事業活動を行う国・地域における、従業員をはじめとしたバリューチェーンに含まれるすべてのステークホルダーの人権尊重を目指していきます。
当社グループは、企業理念として「すべての人たちとともに、人と環境にやさしい社会づくりに貢献します」を掲げ、ICTサービスの提供を通じて顧客・パートナーとビジネスエコシステムを共創し社会を豊かにする価値を提供することで、社会課題を解決することを目指しています。このような理念を掲げる当社グループにとって、人権の尊重は事業を行う上で不可欠です。
BIPROGYグループ人権方針(以下「本方針」)は、人権を持続的開発目標における重要なテーマと定め、複数のパートナーと協働しグローバルで発展・拡張可能なビジネスエコシステムを創り社会課題を解決する企業として、当社グループにおける人権課題についてどのように取り組んでいくかを明確にするものです。
その活動については定期的にBIPROGY株式会社・経営会議および取締役会に報告します。
2024年8月20日
BIPROGY株式会社
代表取締役社長 齊藤 昇
意思決定機関であるサステナビリティ委員会の下部機関であるソーシャル委員会において、人権課題の特定、対応方針の検討、対応を推進するための仕組みの設計と実行状況の管理・監督および懸案事項に関する是正指示等を実施していきます。
審議事項のうち当社グループの業績や事業戦略への影響が大きい重要事項については、サステナビリティ委員会、または経営会議での審議を経て意思決定されます。
また取締役会に対しては、活動状況について、サステナビリティ委員会を通じ、定期的に報告されます。
責任者 | 代表取締役専務執行役員 CSO 葛谷 幸司 |
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審議機関 | サステナビリティ委員会、ソーシャル委員会 |
近年、人権に関する指針やガイドラインが日本の関連機関や経済団体から示され、日本企業においても人権尊重への取り組みが経営上の必須課題となっています。当社グループは、「世界人権宣言」および「ILO中核的労働基準」等の国際規範を支持し、人権尊重を企業活動における重要な要素と認識しています。
当社グループでは、バリューチェーン全体における人権に関する事業リスクを低減させるため、人権デューデリジェンスを実施しています。
2020年に、「ビジネスと人権に関する指導原則」をもとに、「BIPROGYグループ人権方針」を公表し、2024年には、昨今新たに顕在化されている人権課題への対応を踏まえ、方針の改訂を行いました。
また、「ILO多国籍企業宣言」におけるサプライチェーンに及ぶ企業の責任範囲の拡大を踏まえて、サプライチェーンを通じた人権デューデリジェンスの重要性の認識から、2021年度に、主要取引先98社を対象にESGリスクアセスメントを実施し、リスクが認識された49社に対して改善要望を提示しました。
さらに、2024年度は、人権方針に基づいた一連のデューデリジェンスプロセスの一環として、(実際のまたは潜在的な人権侵害のリスクを調査・特定する)人権リスクアセスメントをNPO法人経済人コー円卓会議日本委員会(以下、CRT日本委員会)にご支援をいただき実施しました。
当社グループの全事業(システムサービス、サポートサービス、アウトソーシング、ソフトウェア、ハードウェア、その他)
当社グループの事業拠点がある以下の9ヵ国
日本、シンガポール、アメリカ、ベトナム、タイ、マレーシア、中国、フィリピン、インドネシア
「開発・設計-調達・業務委託-製造・組立-使用-廃棄-全体・その他」のバリューチェーンの各段階
国際規範に挙げられた人権のうち、ビジネスとの関連が深い以下10の人権指標
適正賃金(生活賃金、同一報酬)、適正な労働時間、差別的慣行(ジェンダー、移民労働者)、労働安全衛生、結社の自由、児童労働、現代奴隷、土地の権利、先住民族の権利、プライバシーの権利
事業拠点が所在する国の人権リスク(カントリーリスク)と、事業に関連する人権リスク(事業リスク)から、発生可能性と深刻さを考慮し、潜在的な人権リスクを評価しました。
国別・人権指標別の人権リスクを、国際的なリスク分析・リサーチの専門機関の人権リスクデータベースに基づき4段階で評価しました。
(調査対象期間:2015年1月~2024年10月)
BIPROGY株式会社とその他連結対象グループの事業拠点がある7か国(日本、シンガポール、アメリカ、ベトナム、タイ、マレーシア、中国)を対象に、以下の観点で人権リスクへの影響度合いを評価しました。以下の観点で事業に関連する人権リスクを評価しました。
また、事業リスク評価にあたっては、人権課題に関連する部門の参加者によるワークショップを行い、事業のバリューチェーン上で発生しうる潜在的な人権リスクについて協議しました。
当社グループの主要事業(ICT関連業界)に関して、ステークホルダー/ライツホルダーの声の代替として、世界14000超のNGOによる発信情報と、世界3500のニュースメディアソースの情報を収集・分析し、事業バリューチェーン上におけるステークホルダー/ライツホルダーの人権への影響を評価しました。
当社グループは潜在的な人権リスクを正しく特定、管理できるよう、定期的に人権リスク評価(以下の人権リスクマップを含む)をレビューします。
ライツホルダー | 人権リスク | 事業バリューチェーン | |||||
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開発・ |
調達・ |
製造・ |
使用 | 廃棄 | 全体・ |
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自社グループ 従業員・労働者 |
長時間労働、サービス残業の常態化による健康への影響 | 〇 | |||||
脆弱な立場の労働者に対する長時間労働、低賃金労働 | 〇 | ||||||
脆弱な立場の労働者の不当な解雇 | 〇 | ||||||
外国人労働者の強制労働(パスポート取り上げ、高額な派遣料の徴収等) | 〇 | ||||||
女性、外国人、若年労働者、性的マイノリティへの差別的慣行 | 〇 | 〇 | |||||
不適切な安全衛生管理 | 〇 | 〇 | |||||
労働組合や従業員組織への不当な圧力、抑圧 | ● | ● | |||||
サプライヤー・業務委託先 従業員・労働者 |
ICT製品向け鉱物生産における強制労働・児童労働 | ◎ | |||||
厳しい納期や業務量の要求による長時間労働、健康被害 | ◎ | ||||||
女性、外国人、若年労働者、性的マイノリティへの差別的慣行 | ◎ | ||||||
不適切な安全衛生管理 | ● | ||||||
労働組合や従業員組織への不当な圧力、抑圧 | 〇 | ||||||
製品・サービスの利用者 | 個人情報の漏洩、悪用による個人の安全や財産の侵害 | ◎ | |||||
ICTサービスの悪用、目的外利用(詐欺、搾取等) | ◎ | ||||||
有害コンテンツやインターネットによる児童の性的搾取 | ◎ | ||||||
ICT事業者によるコンテンツ削除や制限による表現の自由の侵害 | ◎ | ||||||
地域住民・一般市民 | インターネットによる特定個人への差別的攻撃 | ◎ | |||||
政府によるネットワークの監視、アクセス制限、検閲 | ◎ | ◎ | |||||
政府から特定の個人情報の提供要請 | ◎ | ||||||
電子機器廃棄物の不適切な処分による地域への悪影響 | ● | ||||||
政府関係者への贈賄 | ● | ||||||
インフラ建設における地域住民の合意や十分な補償のない用地取得 | ● | ||||||
データセンターの電力消費や冷却水消費による地域への悪影響 | ◎ | ||||||
施設の保安会社による行き過ぎた警備(従業員、住民への威圧、暴力等) | ● |
カントリーリスク評価・事業リスク評価に基づき、当社グループに関連性が高い潜在的人権リスクとして、以下4項目のリスクを重要な人権リスクとして特定しました。
ICT産業における主要な人権リスクの一つとして、長時間労働の問題が挙げられており、労働安全衛生面や適正賃金の問題にも関係することが指摘されています。
当社グループにおいては、残業時間数については業界平均を下回ってはいるものの、引き続き注視する必要がある課題であると認識しています。また、一部の海外拠点においては、労使協議・対話の場の不足や、新たなハラスメント規制への対応などの課題を認識しました。
ICT産業という業界特性上、委託先における過剰な労働負荷による長時間労働、労働安全衛生、適正賃金の問題が生じやすいとされています。
今回の調査においても、サプライヤー・業務委託先の長時間労働、ハラスメント、健康管理や、海外委託先の労務管理、適正な労働時間、賃金などの潜在的な課題を認識しました。
ICT産業において、プライバシーの権利は最も重要な人権リスクであると認識しています。
当社グループの事業においては、納入先に重要な個人情報を扱う企業があり、また、納入先企業から一般個人にサービスを提供する中で目的外利用されるリスクも存在することから、不作為の加担による潜在的人権リスクがあるすると評価されました。
また、ICT技術・AI技術の進歩についても、個人の識別・認証技術を利用した人種・性別・特定の属性による選別や、不当な偏見・差別を助長する問題が指摘されているため、それらの技術を扱う企業としての課題を認識しています。
2024年度に第三者機関(CRT日本委員会)を交え、当社グループの人権リスク評価を実施しました。この結果、「自社グループ従業員の労働慣行」を潜在的人権リスクの一つに特定しました。
このリスク評価を踏まえ、「自社グループ従業員の労働慣行」について、海外拠点のうち特に従業員数が多い、USOLベトナム有限会社(以下、USOL-V)を対象に、ライツホルダーである労働者に対し直接インタビューを行い、顕在および潜在的な人権リスクの有無および影響度合いを評価することを目的に、対面インタビューによる人権影響評価を実施しました。
2025年2月17日(月)、18日(火)
対象者への対面インタビューによるヒアリング:
ダッカ原則(責任ある移住労働者の募集及び雇用のための原則)を踏まえ、労働者に関する人権課題を網羅したインタビュー質問表に基づき、各労働者の属性や置かれた環境に関連性が高い項目を優先的にヒアリング
インタビューを通じて、USOL-Vにおける顕著な人権侵害は確認されませんでした。一方、手当の見直し理由や基準に関する十分な説明、および労働者からの意見に対する会社の対応の開示等、労働者と経営層間のコミュニケーションの強化を求める意見が確認されました。
これらについては、引き続き従業員とのコミュニケーションを通じて改善を図っていきます。
当社グループは、システム設計、構築、運用・保守ならびにサービス提供における協力会社様、およびお取引先様などの「ビジネスパートナー」の皆さまと、信頼関係を強化し、互いの持続的な成長を目指しており、その一環として、人権・労働・環境など各側面の課題にともに取り組んでいます。
協力会社様に対する定期刊行物や協力会社様向けWebサイトを通して、当社グループの人権尊重の方針や取り組みを含め、サステナビリティへの取り組み全般についてご説明し、ともに取り組んでいくことをお願いしています。
また、当社およびユニアデックスの協力会社様向けにコンプライアンス・ホットラインを設けており、当社窓口および外部窓口(匿名可)への報告・相談が可能となっています。
2019年度には「BIPROGYグループ購買取引行動指針」を改訂し、サプライチェーンにおける人権尊重の方針を盛り込みました。
近年の人権や環境に配慮した調達への社会要請の高まりを受け、2021年4月に「BIPROGYグループサステナビリティ調達ガイドライン」を公表し、サプライヤーに対して当ガイドラインの浸透を図るとともに、ESGリスクアセスメントを開始しました。
物品/サービス商品の主要なお取引先様に対して、紛争鉱物不使用の確認などに関する調査をESGリスクアセスメントにより実施しています。
就業規則において、パワーハラスメント、セクシャルハラスメント、LGBTQなど性的マイノリティに関するハラスメント等を含め、社員の人格を傷つけ、業務、意欲を阻害させるような行為をしないよう定めています。また、「セクハラ防止ガイドライン」「パワハラガイドライン」を作成し、社内の啓発に努めており、特に管理職に対しては、新任管理職全員が必ず受講する研修において事例の共有を行うなど、注力して啓発を実施しています。
実際にハラスメントの疑いがある事象が発生した場合には、従業員が相談できる窓口を複数設置し、対処する体制を整備しています。人事担当部門に設置された社内相談窓口のほか、匿名・記名を問わず利用可能なコンプライアンス委員会事務局・監査役への直接の報告・相談ルート(ホットライン)を社内外に設置しており、従業員は、相談、報告の内容に応じて、適切なルートを自身で選択・利用することが可能です。
また、これらの報告、相談を行った者(通報者)がそれにより不利益を受けることがないよう、会社は最善の配慮を行うよう定め、通報者の保護を図っています。さらに、通報者の行為に対して不利益な取り扱いを行った役職員に対しては、懲戒処分などの厳正な対応を行うよう、「グループコンプライアンス基本規程」に明記しています。
当社グループは結社の自由を尊重しており、「BIPROGYグループ人権方針」においては、労使間の対話を大切にし、労働者の団結権、団体交渉権を含む労働者の権利を尊重することをコミットしています。
当社グループは、「BIPROGYグループ人権方針」において、あらゆる形態の強制労働や児童労働は認めないことをコミットしています。
また、「特定非営利活動法人 シャプラニール=市民による海外協力の会」(以下「シャプラニール」)の「子どもの夢基金」への寄付を通じ、シャプラニールによる、バングラデシュやネパールなどの東アジア地域における「働く子どもたちを生み出さない社会を目指した活動」を支援しています。
2020年度より、当社グループ役員および従業員を対象とした、ビジネスと人権に関するeラーニングを実施しています。2023年度の受講率は、99.0%でした。
2024年度に実施した人権リスクアセスメントでは、CRT日本委員会のご支援のもと、ソーシャル委員会において、ビジネスと人権に関する勉強会を実施しました。取締役を含む経営層、部長相当職のマネージャーが出席し、当社グループの人権に関する課題について議論しました。
また、事業リスク評価においては、人権課題に関連する部署の課長相当職のマネージャーを中心にワークショップを実施し、ビジネスと人権についての理解と、事業のバリューチェーン上で発生しうる潜在的な人権リスクについて議論しました。
当社グループは、国連グローバル・コンパクトに署名しており、UNGCの日本のローカル・ネットワークである「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」(以下GCNJ)にも加盟しています。2022年度は、GCNJの「人権教育分科会」に参加しました。
基本的な考え方 当社グループでは、「Purpose」を軸として、一人ひとりが「個」の多様性を高め、互いの個性を尊重し合い、自らの個性や能力を最大...
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