気象災害の激甚化など、気候変動の影響が世界規模で深刻化しています。日本では、2020年10月のカーボンニュートラル宣言や、2021年4月に表明した日本の新たな2030年の温室効果ガス削減目標表明など、エネルギー・気候変動政策を大きく転換させています。また、世界の資本市場では、サステナブルファイナンス拡大に向けた動きが加速しており、企業に対しては、パリ協定目標達成に向けた脱炭素社会実現のための具体的な行動とともに、その情報開示が強く求められています。
このような国際社会や日本社会からの期待や要請を踏まえ、当社は2020年4月に気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)提言への賛同を表明するとともに、TCFDコンソーシアムに参加しています。さらに同年7月にはBIPROGYグループとして「環境長期ビジョン2050」の策定とともに、RE100に加盟しました。
当社グループの主要事業であるIT、デジタル領域のサービスは、今後の気候変動をはじめとする環境課題の解決において重要な役割を果たすと認識しており、これらを中長期的な成長機会として捉えています。当社グループの強みの一つである「新たなサービスをデザインし実現する力」とこれまでに培った技術やノウハウを融合させ、お客様や社会が必要とする、気候変動の緩和と適応に貢献するさまざまなサービスを、「デジタルによる社会の共有財や仕組み」として構築・提供していくことで、「環境長期ビジョン2050」に掲げる「ゼロエミッション社会の実現」に貢献していきたいと考えています。
今後も当社グループは、気候変動の緩和と適応への取り組みの強化と適切な情報開示の推進に加え、顧客やパートナーとの積極的な協働により、中長期的な企業価値向上を目指します。
年度 | 主な取り組み |
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2020年度 |
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2021年度 |
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2022年度 |
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2023年度 (上期) |
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当社取締役会における気候関連課題の責任者は、当社グループの「持続可能な開発目標(SDGs)」貢献への取り組みおよびサステナビリティ経営戦略の統括責任者であるCSOが担当しており、CSOは気候関連課題への対応を含む当社グループのサステナビリティ活動を取締役会へ定期的に報告し(2022年度の報告回数は2回)、監督・指導を受ける運用となっています。
また、当社グループの気候変動を含む環境課題への対応は、CSOが委員長を務める意思決定機関「サステナビリティ委員会」または下部機関の「環境貢献委員会」にて審議・意思決定を行います。環境貢献委員会は、環境貢献に関する対応方針の検討、環境貢献を推進するための仕組みの設計と実行状況の管理・監督を行っています。
報酬については、2021年6月より導入した役員報酬制度において、気候関連対応を含む長期業績条件を設定しました。その条件には「Vision2030」の実現に向けて策定したマテリアリティのKPIである、GHG排出量の削減目標を含む複数のESG関連指標を設定しています。取締役会では、諮問機関の指名・報酬委員会の答申をもとに議論が行われ、役員報酬を決定しています。
気候変動への対応は、当社グループの企業価値にさまざまな形で影響を及ぼす重要な経営課題であり、不確実な状況変化に対応し得る戦略と柔軟性を持つことが重要であるとの認識のもと、気候関連リスクの低減と機会拡大に向けて取り組んでいます。2021年より、マテリアリティを中核とした取り組みの推進とともに、環境貢献委員会の活動の一環として、全社横断型のプロジェクトによる気候関連シナリオ分析のインパクト評価を継続して実施しています。これまでの評価の結果、脱炭素への移行に貢献する技術の開発やイノベーション、事業創出のためのリソース投入など、事業支出が増加するものの、気候関連課題解決のニーズに適応した技術やサービスの提供による機会拡大のインパクトが、費用増加リスクのインパクトを上回ると評価しています。これらのインパクト評価結果を、当社グループの各種戦略およびリスク管理に適切に反映していくことで、マテリアリティの実効性を高めます。また、カーボンニュートラルやサーキュラー・エコノミーなど、気候関連課題の解決に貢献する新たな製品やサービスの開発・提供への取り組みを加速します。
当社グループは、「経営方針(2021-2023)」において、顧客 DXと社会 DX を両面から推進しています。社会全体を捉えたより大きな枠組みで事業育成を図ることにより、気候関連課題を含む社会課題解決に資するビジネス機会の創出ならびに創出された市場での収益獲得を目指しています。また、これらの気候関連機会をより確実なものとするためには、技術力向上のための人的資本のさらなる強化、戦略的な投資、信頼される情報開示が重要であると考えています。
当社グループでは、2021年度より、環境貢献委員会において全社横断型のプロジェクトを設置し、気候変動シナリオ分析によるビジネス機会とリスクの抽出(インパクト評価)を実施しています。
企業の長期的価値を左右する重要な経営課題である気候変動による不確実な状況変化に対応し得る戦略と柔軟性を持つために、IEA NZE/RCPシナリオに基づく社会シナリオ群をもとに、ビジネスモデルに影響を与える気候変動関連のリスクとビジネス機会の重要度と事業へのインパクトを評価し、適切かつ戦略的に対応していくための対応策を定義しています。シナリオ分析の結果、主要事業であるデジタル領域のサービスは、今後の環境課題の解決において重要な役割を果たすとともに、Vision2030と環境長期ビジョン2050の実現に十分に寄与する成長機会となりうるものであり、想定されるリスクインパクトとの比較においても、ビジネス機会によるポジティブな事業インパクトがリスクを上回るとの評価結果に至りました。
2023年度の実施した分析の概要および評価結果は以下のとおりです。
当社グループは、気候変動課題は1社の力だけで解決できるものではなく、パリ協定の目標達成のためには、前例のないスケールでの社会システムの変革や、技術革新が必要であり、その実現には、同じ志をもつパートナーとのコミュニティ、「デジタルコモンズ」が重要であると考えています。
環境長期ビジョン2050やVision2030に掲げた、ゼロエミッション社会の実現に向けた取り組みとして、自らの事業活動におけるGHG排出削減だけでなく、お客様と社会に対し、「事業を通じた価値創造による幅広い環境貢献」を目指し、6つの環境貢献領域を中心に、さまざまな取り組みを行っていきます。
当社グループは、以下の6つの環境貢献領域を中心にさまざまなソリューション、サービスを提供しています。これらの取り組みにより、環境課題の解決に貢献し、持続可能な社会づくりを目指しています。
「ITを活用したエネルギー利用効率向上と再エネ普及」に貢献する主なソリューション、サービス
「ITによるモノの生産・消費の効率化、ロスの削減」に貢献する主なソリューション、サービス
「現場に行かず遠隔判断ができる仕組みづくり」に貢献するサービスの提供
「デジタル技術によるグリーンな都市の仕組みづくり」に貢献するサービスの提供
「デジタル技術による人の移動に頼らない仕組みづくり」に貢献する主なソリューション、サービス
「企業のネットゼロ経営の促進」に貢献するソリューション、サービスの提供
当社グループは、自らの事業活動がゼロエミッションへ至るための環境負荷削減施策のひとつとして、100%再生可能エネルギーによる事業運営を目指し、積極的に進めていきたいとの考えから、2020年7月にRE100※へ加盟し、2021年より再生可能エネルギー由来の電力調達を開始しました。再生可能エネルギー電力への切り替えは、化石燃料の使用による地球温暖化を原因とする気候変動の緩和において有効な手段のひとつであり、当社グループが環境課題に取り組むうえでも重要な要素であると認識しています。
また、RE100は、加盟する日本企業に対し、日本の再エネ普及目標の向上や、「企業が直接再エネを利用できる、透明性ある市場の整備」に関して、政策関与と公的な要請を積極的に行うことを要請しています。当社は、経済産業省資源エネルギー庁の事業である「エネルギー供給構造高度化法に基づく非化石電源に係る認定業務」について、国の委託を受けた第三者機関として、認定に係る実務のほか、「非化石証書の利用価値向上に係る調査事業(FIT非化石証書のトラッキングに係る調査事業)」を2018年より受託しており、2020年3月に発行されたRE100による日本の再エネ市場概況レポートでは、当社が提供する電子的トラッキングシステムを使用した実証実験について記載されています。
当社グループは、自らの事業運営で使用する電力の再生可能エネルギーの利用拡大だけでなく、これらの関連事業参画を通じて、RE100加盟企業として、日本における再生可能エネルギー市場の成長にも貢献していきたいと考えています。
当社グループは、「環境長期ビジョン2050」に掲げるゼロエミッション社会の早期実現には、さまざまなステークホルダーとの協働が必要不可欠であるとの認識のもと、環境負荷削減行動を促進するための各種パートナーシップやイニシアチブに積極的に参加しています。
ITセクター企業におけるGHG排出源の上位には、主に自社保有のデータセンターの稼働がありますが、当社グループは自社資産としてデータセンターを保有しておらず、用途に応じて必要な設備環境を豊富なアライアンス企業の中から調達・選定し、お客様の要望に沿ったデータセンターを提供しており、環境性能の高いデータセンターの活用を推進しています。
当社グループが郊外型データセンターとして活用している小浜データセンター※1(福井県小浜市)では、最新の空調技術「壁吹き出し方式空調システム」を採用しています。
この方式は、空調機械室間仕切壁を介して直接サーバールーム内に冷気を供給するため、従来の床吹出し方式に比べ空調システム系の大幅な電力低減が可能となります。
また、冷気と暖気を混ぜない完全な循環型にすることや整流機構を設けることで、22℃の給気でも十分にIT機器を冷却することができます。
さらに寒冷地に立地している利点を活かした外気冷房やフリークーリング※2の併用で、想定電力の100%使用時にはPUE※3 =1.2台を実現できる環境配慮型省エネデータセンターとなっています。
また、その他のデータセンターについても2020年度からGHG排出量の確認に着手し、より環境に配慮した活用をめざします。
2050年代8月の首都圏の地上気温は、1990年代に比べ2~3℃上昇するとの予測があるなか、将来、都市化によるヒートアイランド現象に気候変動による気温上昇が重なることで、都市部ではより大幅に気温が上昇し、人びとの健康や労働環境など、都市生活における影響が懸念されています。
当社グループは、全社員を対象としたテレワーク制度を2017年10月より導入しています。テレワークは、従業員の生産性向上の実現だけでなく、通勤時の交通利用に伴うGHG排出の抑制や、大規模な気象災害や感染症流行など、災害発生時における従業員の安全性や事業の継続性の確保にも有効です。当社グループの従業員は、アフターコロナに向けてテレワーク中心の勤務からテレワークとオフィスワークを組み合わせたハイブリッドワークに移行しつつあるなか、環境負荷低減への意識を維持し業務を進めています。また、国内各所へのサテライトオフィスの設置や、本社ビルのフリーアドレス化の推進により、エネルギーの効率改善が図られています。
当社グループは、気候関連リスクを自社のグループリスクマネジメントシステムへ統合し、管理しています。当マネジメントシステムを統括する「リスク管理委員会」が整備する、グループ全体のリスクを一元的に把握可能な共通管理基盤である「リスク分類体系」に「気候変動リスク」を組み入れています。「気候変動シナリオ分析」で特定された気候関連リスクのうち、当社グループの事業に対し重要度が高いと評価された項目を、管理対象として登録し、リスク管理項目棚卸のプロセスに従い、毎年見直ししています。なお、当社グループのリスクマネジメントに関する体制やプロセスは、「リスク管理委員会・事業継続プロジェクト規程」およびその他関連規程にて明文化され、イントラネットなどを通じてグループ内に広く周知されています。
当社グループは、2021年にマテリアリティで設定したGHG排出量削減などの目標達成に向けた取り組みを着実に進めています。
デジタルやICTサービスを事業の中核とする当社グループのGHG 排出量の多くは、電気の使用によるものです。そのため、RE100に加盟し、購入する電気の再生可能エネルギーへの転換を進めており、2022年度末時点の再生可能エネルギー調達率は23.4%に上昇しました。加えて、オフィスや機器の効率利用などによる省エネルギー施策も推進しています。
これらの取り組みの結果、2022年度の当社グループのScope1+2(マーケットベース)のGHG 排出量は、2019年度と比較して25.1%の削減を実現しました。
さらに、2022年9月には、パリ協定の目標に基づいたGHG 排出量の削減目標である、SBT(Science-Based Targets)認定の取得を目指し、コミットメントレターを提出しました。
指標 | 目標と進捗 |
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ゼロエミッション達成率 | 2030年度まで年次で100%以上 →174.6%(2022年度)、132.9%(2021年度) |
シナリオ分析インパクト評価およびリスク対応率100% | ビジネス機会とリスクの抽出および抽出リスクのグループリスクマネジメントシステム下での管理継続 |
指標 | 目標と進捗 |
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再生可能エネルギー調達率 | 2030年度までに50%以上、2050年までに100% →23.4%調達(2022年度)、7.4%調達(2021年度) |
GHG排出量(Scope1+Scope2)(マーケットベース) | 2030年度までに50%以上削減(2019年度比) →25.1%削減(2022年度)、9.0%削減(2021年度) |
★バリューチェーンを通じたGHG排出量を減らすKPIと目標
GHG排出量(Scope3) | 目標「2027年までに購入した製品・サービス(カテゴリ1)の調達金額の40%を占めるサプライヤーがSBT相当の目標を設定する」を設定(2022年度) |
環境長期ビジョン2050に掲げる「ゼロエミッション社会実現」に向けては、サプライチェーン全体でのGHG排出量の削減が重要であることから新たな目標として「2027年までに購入した製品・サービス(Scope3カテゴリ1)の調達金額の40%を占めるサプライヤーがSBT 相当の目標を設定する」を2022年にマテリアリティのKPIとして設定しました。引き続き、調達におけるGHG 排出量の低減への取り組みの強化を図っていきます。
BIPROGYグループは、品質、コスト、納期、サービスに加え、環境に配慮した事業活動、持続可能な社会の発展への貢献など、総合的な観点から調達判断を行っています。また、BIPROGYは、「BIPROGY株式会社 グリーン調達ガイドライン」に従い、環境保全を推進しているサプライヤーからの環境負荷の少ない製品・サービスの調達を推進しています。
環境長期ビジョン2050に掲げる「ゼロエミッション社会実現」に向けては、サプライチェーン全体でのGHG排出量の削減が重要であることから新たな目標として...
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